さあさあ…餅つき大会終盤です。
みんな満足気に、それぞれのユニットへ帰っていきます。
「あ…良かった…誰も餅を詰まらせず、誰も怪我しなかった…」
と、ホッと胸をなでおろす私です。
すると…
いつの間に居たんでしょう…
私の横で私を見上げ一言いいました…
「私にもくれんね…」って…
「エッ…」と私の顔に緊張が走ります。
だってね…
この人「100歳」ですよ。
口がポカンと開き、固まってしまった私に…
でも、諦めずに再度私に言うんです。
「私も食べたい!まだ食べとらん!」って
さっと私の脳裏を思いが駆け巡ります。
100歳の人を…この一口で命を落としたら…と
そして、詰まらせている顔が目に浮かびます。
だって最近嚥下力も落ちていて、時々むせてますよ…
数回入院・退院を繰り返し、その都度命が危ないと覚悟した人ですよ…
周りの職員に思わず助けを求める私ですが、みんな首を30度傾けてて…
「あ~ 神様~ どうしたらいいんですか?」と、心の中で必死で祈る私。
拒否して帰したら、この人はずっと思うでしょう…
「餅を食べさせてくれんかった…この人が…」と…
そう…きっと死ぬ間際まで…
結局…
「じゃ少しだけね」と言って、あん餅を少しちぎってあげました。
直ぐに「パクリ」…
私は「タラ~リ」冷や汗が…
すると「もっとくれんね!全部くれんね!手にくれんね!」ですって…
仕方ないか…と「吸引器」に目をやる私です。
覚悟を決めました。
「半分ね…みんな半分ずつ食べよるから」と言って、餅を半分にちぎりました。
そして、思わず小さい方をその手に渡し、さっと残りの餅は私のポケットに隠しました。
嬉しそうな顔…
満足げな100歳の顔です。
「少しづつよ…慌てないでね…よく噛むんよ…」と言う私の口が渇かないうちに…
「パクパクパク…」と、アッいう間に全部口の中に入れちゃいました。
みんながかたずを飲んで見守る中…
ゴクンと飲み込み「美味しかった」と言いました。
そして、「ありがとう ありがとう ありがとう…」と言って私を見上げ、
感無量の顔をしました。
「また、来年も食べようね…元気でいるんよ」と、私が言うと…
「わからんね…」と一言…
これが最後のお餅だと認識している顔でした。
あ~
「終わった…私の任務…無事に…」
利用者がみんな帰って…
どっと疲れがやってきました。
「神様…今日一日共に居て、守って下さった事を感謝します」と
感謝の祈りをしました。
おわった…
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